Column

過疎地医療が抱える課題、訪問看護や遠隔医療の可能性、DX、地域活動がもたらす変化について、広島県呉市の現場から得た知見をもとに発信するコラムです。地域医療の「これから」を考えるヒントをお届けします。

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予防的ヘルスケアと見守りが過疎地医療を支える理由

前回、前々回のコラムでは、広島県呉市の過疎地医療が抱える「距離」の課題と、それを補う訪問看護・遠隔医療についてお伝えしてきました。今回は少し視点を変えて、「そもそも病気や介護が必要な状態になる前に、何ができるか」という予防と見守りの重要性について考えてみたいと思います。

平均寿命と健康寿命の間にある「差」

日本人の平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間)には、依然として大きな差があります。2022年のデータでは、男性で8.49年、女性で11.63年という開きがあり、この期間は多くの場合、通院や介護、生活の制限を伴う時間になります。この差を縮めることは、単に長生きするかどうかではなく、「その人らしい生活をどれだけ長く続けられるか」という、生活の質そのものに関わる問題です。高齢化率35.5%の呉市のように、支援を必要とする人の割合がもともと高い地域では、この差の期間に必要な支援が届きにくいという事情が重なり、予防の重要性はより一層高まります。

孤立が健康に与える影響

高齢者の一人暮らしが増える中で、「孤食」、つまり一人で食事をとる機会が多くなることも、見過ごせない課題です。孤食は栄養バランスの偏りや食欲の低下を招きやすく、活動量の減少や体調の変化に周囲が気づきにくくなる状況にもつながります。誰かと一緒に過ごす時間が減ることは、体調面だけでなく、気持ちの落ち込みや外出意欲の低下にもつながりやすいことが知られています。人とのつながりが希薄になりがちな過疎地域では、こうした変化が発見されるまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。

「異変に早く気づく」仕組みとしての見守り

過疎地医療の課題は、症状が出てから医療機関につなぐスピードだけでなく、症状が出る前の段階で異変に気づけるかどうかにも左右されます。食欲の低下、活動量の変化、会話の様子といった、本人も家族も見過ごしがちな小さなサインを継続的にとらえることができれば、重症化する前に手を打つことができます。私たちが提供している予防的ヘルスケアと見守りサービス「STARTWELL」は、こうした日々の健康状態や生活の変化を継続的に見守り、重い病気や要介護状態に至る前の段階で気づき、対応するきっかけをつくることを目指しています。限られた人手で広いエリアをカバーしなければならない過疎地域だからこそ、こうした継続的な見守りの仕組みが力を発揮すると考えています。

コミュニティランチが果たす、もうひとつの見守り

私たちが開催しているコミュニティランチも、この見守りの一部です。一緒に食事をとる機会は、栄養面での支えになるだけでなく、「今日はいつもと様子が違うな」といった小さな変化に周囲が気づくきっかけにもなります。人と会い、外に出て、誰かと言葉を交わすという社会参加そのものが、介護予防につながる取り組みとして各地で注目されています。制度としての見守りサービスと、地域の人と人とのつながりという二つの目を組み合わせることで、過疎地域における予防の網を少しずつ厚くしていけると考えています。

「治す医療」と「防ぐ医療」を両輪で考える

これまでの2回のコラムで取り上げてきた訪問看護や遠隔医療は、主に「体調を崩した後、どう医療につなぐか」というテーマでした。一方で予防・見守りは、そもそも医療や介護が必要になる手前の段階を支える取り組みです。限られた医療資源を、本当に必要なところに届けるためにも、この「防ぐ医療」の視点は過疎地域においてますます重要になっていくと考えています。

おわりに

訪問看護、遠隔医療、そして予防・見守り。過疎地医療の課題は、病気になってからの対応と、病気になる前の備えの両方を組み合わせて初めて、持続可能な形になっていくと感じています。次回は、地域の魅力を活かしたヘルスツーリズムの取り組みについてご紹介します。

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