厚労省の「攻めの予防医療」と、私たちが呉市で目指してきたこと
厚生労働省は、健康寿命のさらなる延伸を目指す新しい方針として「攻めの予防医療」を掲げています。これまでこのコラムでご紹介してきた訪問看護、STARTWELL、コミュニティランチ、ヘルスツーリズムといった取り組みは、実はこの国の方針と多くの点で重なっています。今回は、「攻めの予防医療」の中身を紐解きながら、私たちの取り組みがどう位置づけられるのかを整理してみたいと思います。
「攻めの予防医療」とは
「攻めの予防医療」とは、一人ひとりが健康を「自分ごと」として捉え、主体的に健康づくりに取り組めるよう支援する、科学的根拠に基づいた予防医療の考え方です。病気になってから治療する「待ちの医療」ではなく、健康づくり(一次予防)、早期発見・早期治療(二次予防)、重症化予防・リハビリテーション(三次予防)までを一体のものとして捉え、自治体・保険者・企業が連携しながら、少子高齢化が進む社会でも誰もが活躍し続けられる基盤をつくることを目指しています。
一次予防:健康づくりとしてのコミュニティランチとヘルスツーリズム
国が重点領域として挙げる栄養・食生活や健康づくりは、私たちが取り組んできたコミュニティランチやヘルスツーリズムと重なります。一緒に食事をとる機会や、地域の資源を活かした社会参加の取り組みは、病気になる前の段階で生活の質を底上げする、一次予防そのものです。
二次予防:STARTWELLによる早期発見
早期発見・早期治療という二次予防の考え方は、第5回でご紹介した事例そのものです。STARTWELLによる日々の見守りが、認知症の兆候という小さな変化を見逃さず、介護保険の認定や必要な支援へと早期につなげることができました。国が重点領域の一つに「認知症」を掲げていることとも、この実践は直結しています。
三次予防:訪問看護による重症化予防とリハビリ
そして、重症化予防や切れ目ないリハビリ支援という三次予防の領域は、私たちの訪問看護ステーションが日々担っている役割そのものです。在宅での療養を支え、悪化を防ぎながら、その人らしい生活をできる限り維持すること。これは「攻めの予防医療」が目指す姿と重なります。
なお、国が重点領域として挙げる歯科保健や性差に由来するヘルスケア(更年期症状など女性特有の課題への対応)についても、今後、訪問看護やSTARTWELLの現場で見えてきた課題として取り上げていく機会をつくれればと考えています。
自治体・企業との連携という視点
「攻めの予防医療」が重視するもう一つの要素が、自治体・保険者・企業の連携です。第5回でご紹介した地域包括支援センターとの連携や、第6回でお伝えした実証実験の受託を通じた企業との協働も、まさにこの考え方に沿ったものだと言えます。私たち一社だけで過疎地医療の課題を解決することはできませんが、行政や他の企業と手を組むことで、より大きな力になっていくと考えています。
おわりに
一次予防から三次予防まで、そして自治体や企業との連携まで、「攻めの予防医療」が描く姿は、私たちが呉市でこれまで取り組んできたことと驚くほど重なっていました。これは偶然というより、過疎地という「医療資源が届きにくい現場」で試行錯誤を重ねてきた結果、自然と国の方針と同じ方向を向いていたのだと感じています。国の大きな方針と、私たちの現場の実践がつながっていることを確認できたことは、今後の取り組みを続けていく上での大きな後押しになります。
