Column

過疎地医療が抱える課題、訪問看護や遠隔医療の可能性、DX、地域活動がもたらす変化について、広島県呉市の現場から得た知見をもとに発信するコラムです。地域医療の「これから」を考えるヒントをお届けします。

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STARTWELLから訪問看護へ、切れ目なくつながった見守りの事例

これまで4回にわたり、過疎地医療を支える取り組みについて考え方をお伝えしてきました。今回からは予告どおり、私たちの現場で実際にあった事例をご紹介していきます。第1回目は、予防・見守りサービス「STARTWELL」から訪問看護へと、大きなトラブルなくつなぐことができたケースです。なお、個人が特定されないよう、年齢や状況の一部を変更してご紹介します。

もともと近所付き合いが得意ではなかった方

ご紹介するのは、呉市の島嶼部で一人暮らしをされていた高齢の女性です。もともと近所付き合いが得意な方ではなく、地域の集まりに顔を出すこともあまりありませんでした。ご本人の希望もあり、私たちが提供する見守りサービス「STARTWELL」を長く利用され、日々の健康状態や生活リズムを見守らせていただいていました。

免許返納をきっかけに始まった変化

大きな変化のきっかけは、運転免許証を自主返納されたことでした。移動の自由が制限されたことに加え、その頃から物忘れなど、認知症を思わせる様子が少しずつ見られるようになっていきました。ご本人からの発信も少ない中、周囲がその変化に気づくことは決して簡単ではありません。

「アラートが増えた」という小さなサイン

変化のサインは、意外なところに表れました。それまで毎日欠かさず身につけていたスマートウォッチを、着け忘れる日が増えてきたのです。結果として、見守りシステムからのアラートが頻繁に発報されるようになりました。単なる「着け忘れ」として片づけることもできたかもしれませんが、私たちはこの変化そのものを、生活に何らかの支障が出てきているサインとして受け止めました。

地域包括支援センターとの連携、そして訪問看護へ

この気づきをもとに、私たちから地域包括支援センターとも連携を図り、介護保険の認定手続きを進められるよう動きました。手続きが進む中で、私たちの訪問看護ステーションが介護サービスの一つとして関わり始め、STARTWELLによる見守りから訪問看護による直接的な支援へと、切れ目なく移行することができました。ご本人にとっても、まったく知らない事業者に一から状況を説明する負担がなく、すでに関係のできていた私たちがそのまま支援を引き継げたことは、大きな安心材料になったのではないかと思います。

もしSTARTWELLがなかったら

近所付き合いが得意でなかったこの方の場合、地域の目による気づきは、正直なところ期待しにくい状況でした。もしSTARTWELLによる見守りがなければ、変化に気づくのがもっと遅れ、思わぬ事故やトラブルにつながっていた可能性も否定できません。予防・見守りと訪問看護を同じ事業者が手がけているからこそ実現できた、切れ目のない支援のかたちだったと感じています。

予防と見守り、そして医療をつなぐという発想

第3回のコラムで、私たちは「治す医療」と「防ぐ医療」を両輪で考える必要があるとお伝えしました。この事例は、まさにその両輪がうまくかみ合った例だと思っています。STARTWELLによる日々の見守りが「防ぐ」役割を果たし、変化のサインを見逃さなかったことで、介護保険の認定や訪問看護という「支える」段階へと、時間のロスなくつなぐことができました。もしそれぞれが別々の事業者だったとしたら、情報の引き継ぎや関係づくりに時間がかかり、対応が後手に回っていたかもしれません。

おわりに

技術による見守りと、地域包括支援センターをはじめとする制度、そして訪問看護という直接的な支援。この事例は、これらが一つにつながることで、一人では気づけなかった変化を早期にキャッチし、必要な支援に結びつけられることを示しています。次回も、現場で実際にあった取り組みの事例をご紹介していきます。