COMMUNITY-BASED CARE

日本の社会保障制度において、膨張する医療・介護費用などの支出面からだけでなく、生産年齢人口の減少や非正規雇用の問題など、収入面からも危機的状況に置かれているのが我国の現状です。高齢者人口は、2040年あたりに3,868万人でピークを迎え、その後はゆっくりと減少することが予想されています。
つまり、ここ15年から20年ぐらいが一番厳しく世代間格差も拡大します。この時間をどう耐えていくか、ここをどうしていくのかを、私たちは考えていかなければなりません。

「まちぐるみの介護」とは

ここ安芸灘地域においても、日本の他の地域と同様あるいはそれ以上に、医療介護資源が足らないといった状況であり、 特に「訪問看護」「配食サービス」「通院時の呉市街間との移動」に問題を抱えています。

具体的には、人的リソースがまったく足りていないことから、訪問看護ステーションがなく、在宅における医療サービスを受けれない人が多くいます。 配食サービスにおいては、サービス提供エリアから外されてしまうなど、島から企業の撤退が相次いでいます。そして、本島にある病院までの移動コスト・時間に住民はいつも悩まされています。

【大崎下島が抱える問題】
・訪問看護ステーションがありません。
・特別養護老人ホームも常に満床です。
・継続的なリハビリを受けることができません。
・高齢化率がすでに65%の地域もあり、人口減少で空き家も増えています。
・企業の撤退が相次いでいます。
・配食サービスがなく、毎日の食事に困っている方がいます。
・移動時間やコストに悩み、病院に行くことを諦める人がいます。

人生100年時代を最期まで元気で幸せに生きるために、これからの私たちは、要介護にならないように健康寿命をできる限り延ばしていかなければなりません。

健康寿命を延ばすためには、介護が必要となる疾患をできる限り予防し、社会的孤立を防ぎ、生きがいをもって生きていくことが重要です。

そして、2040年までの厳しい時間を乗り越えていくために、私たちは、どの世代にとっても最期まで生きやすくなる新しい暮らし方を実現したいと考えています。

その新しい暮らし方とは、①身体状況に合わせて住まいを変えられる、②毎日の食事が楽しみになる、③いつもそばで見守ってくれる人がいる、④隣近所でお互いに助け合える、⑤世代を超えて学び合える、⑥可能な限り働ける、⑦自分の居場所が複数ある、これらが実現できることです。

私たちは、この仕組みを「まちぐるみの介護」と呼びます。

「まちぐるみの介護」とは、“介護”と“アルベルゴ・ディフーゾ”を組み合わせたもので、集落にある空き家のリノベーションを行い、訪問看護の機能と従来からある住民同士の共助を組み合わせることで、家族や介護保険に極力頼らず、住民同士の共助と専門家によって見守られる地域での新しい暮らし方です。

アルベルゴ・ディフーゾとは、空き家を再利用して宿泊施設とし、まち全体に点在するサービスと結びつけて観光客をもてなすことです。アルベルゴは「ホテル」、ディフーゾは「分散する」という意味をもち、直訳すると「分散したホテル」となります。私たちは、この考えを介護に持ち込みました。

空き家は、多世代共生型シェアハウスなどの住居施設に改修します。入居対象となるのは、主に介護になる前の前期高齢者やリタイヤ生活者、配偶者に先立たれた単身世帯の方、セカンドライフを里山で過ごしたい移住者、シングルペアレント、多拠点生活者、フリーランサーなどです。

「まちぐるみの介護」の目的は、できる限り健康寿命を延ばし、要介護状態の期間を減らすことです。健康寿命を延ばしていくために「まちぐるみの介護」に入れる機能として、①医療・介護保険による「訪問看護サービス」、②「多世代共生型シェアハウス」の運営、③孤食を防ぐための「シェアダイニング」、④スポーツや趣味を通した「コミュニティ形成」、⑤いつまでも可能な限り働けるように「ワークシェアリング」の5つを実装します。

今後、多くの人々にとって、老後の生活費を蓄えだけで賄うことはむずかしく、新たな収入源の確保や生活コストの切り詰めで対応していくことが考えられます。そのためにも、みかんやレモン栽培などによる「収入源の確保」と島ならではの「低コストでの生活」を提供します。

そして、看護師や介護士などの専門家は、住居施設の管理者やカフェの給仕人などパラレルワーカーとしても地域に溶け込み、まちに点在します。居住者やまちの住民は、いつでも看護師や介護士に自分の健康について相談できます。さらに、「シェアダイニング」で住民が孤食にならない仕組みも作ります。「何を食べるか」と同じくらい「誰と食べるか」も大切なことです。

つまり、このまちに住み続ける人々は、仕事やスポーツ・趣味などを通して社会に参加することで、高齢になっても社会からはじき出されることなく生きがいを持つことができ、さらに看護師などの専門家に健康を見守られ、低コストで元気に生きていけるということです。

私たちは、健康寿命を延ばすことにフォーカスした仕組みである「まちぐるみの介護」は、今後の日本において最も求めらえるものだと考えています。

【住民の方が実現できること】
・身体状況に合わせて住まいを変えられる
・シェアダイニングで毎日の食事が楽しくなる
・いつでも健康について相談できる人がいる
・助け合うことがもっと当たり前になる
・可能な限り働き続けることができる
・自分の居場所が複数つくれる