COMMUNITY-BASED CARE

日本の社会保障制度において、膨張する医療・介護費用などの支出面からだけでなく、生産年齢人口の減少や非正規雇用の問題など、収入面からも危機的状況に置かれているのが我国の現状です。高齢者人口は、2040年あたりに3,868万人でピークを迎え、その後はゆっくりと減少することが予想されています。
つまり、ここ15年から20年ぐらいが一番厳しく世代間格差も拡大します。この時間をどう耐えていくか、ここをどうしていくのかを、私たちは考えていかなければなりません。

「まちぐるみの介護」とは

日本の介護問題を、国に頼らず自分たちの手で切り開いていく

ここ安芸灘地域においても、日本の他の地域と同様あるいはそれ以上に、医療介護資源が不足しています。私たちが、医療・介護に関わる問題を調査をしてきた結果、特に問題だったのが、「訪問看護ステーションがない」ということでした。

訪問看護ステーションがないということは、「医療的な処置を自宅でできないために、住み慣れた地域で死ねない」や「終末期に自宅に帰るという選択肢がない」といったことが起きており、つまり、「住み慣れた場所で安心して生活できない人がたくさんいる」ということです。

もちろん、看護師や介護職員などの人手不足や空き家問題、医療費の増大、年金問題など全国的に通底する問題も抱えています。そして、さまざまな問題を抱える日本の介護、その将来は、このままでは立ちゆかなくなってしまいます。国が抜本的対策を取らずに問題解決を先送りにしてきた結果、私たちには厳しい老後が待っています。

私たちは、これからの日本には「新しい暮らし方」が必要になると感じており、そのため、国に頼ることなく、自分たちの手で乗り越え発展していく道を選びました。

「100歳まで生きたら、おもしろかった」と思える“新しい暮らし方”とは?

それでは、どうすれば私たちは、「100歳まで生きたら、おもしろかった」と思うことができるのでしょうか?

それは、「要介護状態にならないように健康寿命をできる限り延ばす」ことだと考えます。すなわち、「ぴんしゃん、ころり」です。

なぜ「ぴんぴん、ころり」ではなく、「ぴんしゃん、ころり」なのか。「しゃん」は、認知症にならずに脳も元気で活発にしているという意味です。人それぞれに考えがあると思いますが、これが多くの人々にとって理想的な生き方・死に方なのではないでしょうか。

では、「ぴんしゃん、ころり」になるために必要なことは何でしょうか? それは以下の3つです。

①介護が必要となる疾患をできる限り予防する
②社会的孤立を防ぐ
③生きがいをもつ

私たちは、「ぴんしゃん、ころり」になるために必要なこれらの3つの要素をサービスとしてまとめ、それを「まちぐるみの介護」と名付けました。

看護師や介護士、セラピストがまちに点在し、人々の健康を見守る

この「まちぐるみの介護」は、言い換えれば、「遠く離れた家族や介護保険に極力頼らず、住民同士の共助・互助と専門家によって見守られる地域での新しい暮らし方」と言うことができます。ここでいう専門家とは、看護師や介護士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などを指します。左図は、その「まちぐるみの介護」のイメージです。

空き家をリノベーションしたシェアハウスには、セカンドライフを里山で過ごしたい移住者や一人暮らしが不安になってきた地域住民の方などに住んでいただきます。

“一人暮らしが不安”とは、たとえば、「ガスコンロの火を付けっ放しにしてその場から離れてしまう」や「パートナーに先立たれ毎日の料理に苦労している」、「電球の交換や一軒家の掃除が大変になってきた」などのようなことがあげられます。

そして、看護師やセラピストなどは、訪問看護ステーションから利用者のいる自宅に訪問するだけではなく、シェアハウスの管理者やカフェの店員などとしても働きます。

彼らは、人々の生活習慣を日頃から看るために地域に点在します。看護師は(地域住民と日常的に交流し)、まちの人として生活の動線に入り込み接点を持つことで、人々の健康状態を把握します。

つまり、まち全体をまるごと、なめらかに見守るのです。

「まちぐるみの介護」に実装する5つの機能

私たちは「ぴんしゃん、ころり」を実現するために、次の5つの機能を「まちぐるみの介護」に実装します。

①医療・介護保険による「訪問看護サービス」
②「多世代共生型シェアハウス」の運営
③孤食を防ぐための「シェアダイニング」
④スポーツや趣味を通した「コミュニティ形成と醸成」
⑤いつまでも可能な限り働くための「ワークシェアリング」

まずは「訪問看護サービス」です。これは調査でもわかった通り、地域に足りないサービスでした。住民の方がすみ慣れた地域で、できる限り長く過ごしていくために、2020年1月から「訪問看護ステーションうらにわ」が開設しました。

二つ目は、「多世代共生型シェアハウス」です。パートナーに先立たれ、一人での生活がむずかしくなってきた方などが、シェアハウスで多世代の居住者とともに生活をします。

日々の生活コストを減らしたい若者やシングルペアレント、多拠点生活者、移住者などと助け合いながら暮らせる場所を目指します。私たちは、子供でもお年寄りでも、その人にしかできない役割があると考えています。

また看護師などは、移住者と地域住民の間をつなげる潤滑油としても機能します。というのも、セカンドライフを里山でゆっくりと過ごしたいといったニーズはありますが、実際に地域に溶け込むことは想像以上にハードルが高いものです。

そこを日頃から地域のことをよく知る看護師などが、双方をつなげていくことで、移住者もなめらかに地域に溶け込めるはずです。

三つ目は、「シェアダイニング」です。シェアハウスのダイニングを地域住民にも開放します。

たとえば、パートナーに先立たれてしまった方で、料理が作れず、日々の食事を冷凍食品で済ますしかない方や、毎日の料理が大変でたまには楽をしたいと考える高齢者の方などが、居住者と一緒に食事ができる場を用意したいと考えています。

「何を食べるか」も大切なことですが、「誰と食べるか」も同じように大切です。会話のあるあたたかい食事をこの地域に取り戻したいと考えています。

四つ目の「コミュニティ形成と醸成」は、健康増進や生きがいの創出、そして、自宅や職場以外で自分の居場所を複数持つことが目的です。

個人が思いのまま心地良く過ごすことができ、くつろぐことができる中立地帯をいくつもつくりたいと考えています。また、今までは一人で悩みを抱えていたことも、コミュニティ内で相談ができればストレスの軽減にもつながります。

スポーツや趣味というフィルターを通して、子供からお年寄りまで全員が継続して参加できるサードプレイスを構築します。

最後は、「ワークシェアリング」です。ここの住民の方にとって畑は生きがいそのものです。毎日、畑に出かけ、作物の様子を見ることが楽しみなのです。

しかし、若い頃は広い畑でも管理できていましたが、高齢になるに従い、体力的に大変になってきます。さらに物忘れなども重なり、これまで出来ていたことが、出来なくなっていくことは本人にとって大きなショックです。

そこで、移住者の方や地域に定期的に訪れる旅行者・関係者と畑をシェアできるようにし、いつまでも働ける環境をつくります。一人では大変な畑の管理も複数の人が関わることで、持続させることができます。

私たちは住民の方の収入源と生きがいを守りたいのです。

私たちの仕事は、人々のセカンドライフの“伴走”をすること

人類の寿命が大きく延びたことによって、老後をどう生きていくかが問われています。特にこれまで仕事一辺倒で生きてきた人たちにとって、定年後の時間をどう過ごすかは大きなプレッシャーになってしまうのではないでしょうか。

世界の人たちと比べて遊ぶことが苦手な日本人には、このような「伴走者」が必要だと考えています。つまり、私たちは、人々のセカンドライフにおいて、そばについて一緒に走る「伴走者」になるということです。